今回まとめたのは、価格の高い・安いではなく、2015年から2025年にかけて中古マンションの坪単価がどれだけ下がったかという「値下がり率」の全国ランキングです。374件の市区町村を対象に、下落幅の大きい順に並べています。
最初にご覧いただく表は、各エリアの成約価格を単純に平均して算出したランキングです。この方法では、**愛知県瀬戸市**が-21.7%で1位、**愛知県豊明市**が-11.5%で2位となっています。ただし平均値は、極端に高い金額の成約が1件混ざるだけで大きく引っ張られてしまう性質があります。取引件数が数十件程度のエリアでは、たとえば築浅の大型住戸が1件成約しただけで、そのエリア全体の『値下がり率』が実態以上に大きく(あるいは小さく)見えてしまうことがあります。
つまりこの平均値ランキングは、街全体の値動きというより、たまたまその期間に成約した物件の顔ぶれに左右されている面があります。実際に多くの人が売買している価格帯の動きを見るには、真ん中の価格を示す『中央値』で見直す必要があります。
中央値で集計し直すと、顔ぶれは大きく変わります。平均値では1位だった**愛知県瀬戸市**は9位に後退し、代わって平均値では3位だった**埼玉県狭山市**が-31.7%で首位に浮上しました。また平均値の表にはなかった**北海道旭川市**や**京都府長岡京市**が新たに上位に入ってきています。
中央値は、ごく一部の高額成約や特殊な物件の影響を受けにくく、そのエリアで実際に取引されている『普通の価格帯』の動きを映しやすい指標です。以降はこの中央値のランキングをもとに、各エリアの背景を見ていきます。
**このランキングは「価格の高さ」ではなく「10年間の伸び率」の順位です。**坪単価そのものが最も高いのは東京都 港区(628万円)ですが、伸び率では349位。同じく高価格帯の東京都 中央区(351位)、東京都 千代田区(326位)、東京都 渋谷区(340位)も上位ではありません。すでに高い水準にあるエリアほど、そこからの伸びしろは限られます。
中央値ランキングで目を引くのが、**埼玉県狭山市**の-31.7%という下落幅です。参考データを見ると、狭山市では2021年第3四半期に4,700万円・260平方メートルのオープンフロア物件、2025年第2四半期には4,400万円・75平方メートルの3LDKといった成約が記録されており、期間内に価格帯の異なる物件が入れ替わりながら取引されてきたことがうかがえます。
同様に、**福島県いわき市**では8,500万円・105平方メートルの築2024年物件という高額成約がある一方、2021年には4,900万円・85平方メートルの物件も成約しており、値下がり率19.0%という数字の裏には、時期によって成約する物件の規模や築年数に幅があることが見て取れます。**北海道旭川市**でも2025年に5,200万円・100平方メートル前後の築浅4LDKが複数成約しており、こうした具体的な取引の積み重ねが中央値の変化として表れています。
値下がり率の上位には、**北海道旭川市**や**北海道小樽市**、**福島県いわき市**、**秋田県秋田市**など、大都市圏から離れた地方の中核都市が目立ちます。これらの都市は東京都心のように再開発や人口流入が続くエリアとは異なり、人口動態や地域経済の変化を背景に、住宅需要の伸びが緩やかになりやすい面があるとみられます。一方で参考データにある**東京都港区**や**中央区**は坪単価そのものは高いものの、値下がり率ランキングでは349位・351位と下位にとどまっており、価格水準の高さと値下がり率の大きさは別の軸であることが分かります。
また、**三重県津市**や**愛知県瀬戸市**のように、大都市圏に近接しながらも中心部そのものではないエリアも上位に含まれています。こうした都市では、近隣により利便性の高い選択肢が存在することが、相対的な価格の伸び悩みにつながっている可能性があるとみられます。